しらたまの飲酒ブログ

日本酒ばかり飲んでいたら、他の人は消えてしまった。別ブログではその辺の雑草とか採って食べてます→ https://shiratamarr-michikusa.hatenadiary.jp/

愛用している酒器について その2 〜 尾形アツシの無地刷毛目

5年くらい前、六本木の国立新美術館の地下1階のミュージアムショップで器の展示販売が時々行われていて、そこで展示されていた尾形アツシさんのぐい呑が気に入って購入して以来、愛用している。

 

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尾形アツシさんは、奈良県で作陶されている陶芸家さんで、土の風合いを素直に活かした、素朴ながらも凛とした作品を作られている。

尾形アツシ Atsushi Ogata - うつわ祥見 web shop

 

あまり焼き物に詳しいわけではないのだけど、粉引(こひき)や刷毛目(はけめ)がすごく好きなんですよ。粉引、刷毛目というのは、器の成形後、生乾きの状態で表面に白い粘土を塗ってから焼く技法、あるいはそれによってできた器。水に溶かした粘土を化粧土として、器全体を浸して付けるのが粉引、刷毛などで一部に付けるのが刷毛目。白磁が希少だった時代において白い器は憧れの対象で、白い化粧土を使うことで白く見せようとしたということらしい。

この尾形さんの器は、高台(器がテーブルに接する部分)や腰(高台のちょっと上らへん)に化粧土が施されてないので、無地刷毛目ということになるんですかね。刷毛目とは言いつつ、浸しているので刷毛の跡はない。

粉引や刷毛目は、器を形づくる土(原土)と釉薬となる白粘土とでは焼いた時の縮み具合が違うので、白粘土の層に貫入(釉薬の層に見られる小さなひび)ができやすく、そこから水が染み込みやすい。これを雨漏りといって、水の染み込んだところの色が変わって、その器の味になるわけです。以上『美の壺』の受け売りですありがとうございました。

 

 

まず上から見てみる。

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右半分が柔らかさと明るさをたたえているのに対し、左半分には影が差しており、全体として上弦の月のような趣を呈していて美しいですね。全くの余談ですが矢沢あい作品の中では『下弦の月』が一番好きです。

 

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貫入(表面のひび)が綺麗な模様を生み出しています。ガラス質の小さな固まりもいいアクセントになっていて、光が当たる角度によってはこれが光ってエモエモのエモ。

 

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化粧土の厚みにグラデーションがあり、原土が透けている部分の存在が、却って化粧土の厚い部分のぽってりとしたテクスチャーを引き立てている。高台に掛け流された化粧土が菌糸のような繊細な模様を作っていてこれまた美しい。

 

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この器は全体として端正で静謐な印象が強いが、高台のゴツゴツ感が面白い対比になっている。

 

 

 

上記の通販サイト見てたら欲しくなっちゃって尾形さんの粉引の茶碗も買っちゃった。いい年の瀬ですね。