頭の悪いつまみが好きなのよ
啓蟄の候、ふきのとうが顔を出し、海では白魚が春を告げる時分である。
富山ではホタルイカが岸にやってきている。
初鰹はもうちょっと先か。
もう少し暖かくなれば筍が出る。
旬のものは美味い。
それでも、承知のうえで申し上げる。
頭の悪いつまみも美味い。
ここに言う「頭の悪さ」はジャンキーであることとほぼ同義で使っているが、あえて単純な味覚や不健康さを志向するような、意図されたジャンキーさを含意する。
頭の悪い食べ物を錬成するにあたり、東の横綱がとろけるチーズだとすれば、西の横綱はマヨネーズだろう。
焼いたスパムにべったりとケチャップとマヨネーズをつけるとか、カップ焼きそばにマヨネーズと胡椒を追加するとかである。
マヨアンチが見たら発狂するだろう。
※ 筆者はいわゆるマヨラーではないことは申し添えておく。
あとは、私は酒の肴に目玉焼きを作るのだが、ケチャップとマヨネーズをかけると、品がない感じの仕上がりになってとてもよい。( さらにパルメザンチーズがかかっていたらなおよし)
目玉焼きに何をかけるかについてはいろんな宗派があるので、こんなことを言うと、塩派あたりから命を狙われるかもしれない。
※ 常にこんな食べ方をしているわけではなく、オリーブオイルと塩胡椒を振るときもあるし、ご飯のおかずにするときは醤油派であるので、その旨申し添えておく。また、私はケチャップ単体をかけることはないので、ケチャップ派の御仁におかれては共感を持たれると困る。あと、ソースかけるのだけはちょっとよくわからん。
さて、マヨネーズ系の頭の悪い肴にはどんな日本酒を合わせるか。
以前はよく悩んでいた問題だが、最近は白麹を使った酸が効いた銘柄が出てきているので、悩まずに済むようになった。
新政の亜麻猫以来、焼酎で使われる白麹を使った日本酒をよく見かけるようになったし、泡盛をルーツとする黒麹を使った日本酒も登場している。
クエン酸由来の酸味は、柑橘類に似た鋭さと爽やかさがあり、洋食なんかにもよく合う。
面白かったのが、ちょっと前に飲んだ白杉酒造(京都府京丹後市)の白木久ブラックスワン。
黒麹の酸が冴えるが、旨味もよく乗っていてパワフル。
3段仕込みの2日目には酵母を増殖させるために「踊り」という日があります。このミルキークイーンで造るブラックスワンでは、品温をあえて保ち、狂気なまでに踊り狂わせました。お米の甘さにクエン酸が溶け込む甘酸っぱい狂気な美味しさ。
山岸涼子先生のファンなんでしょうかね。
白杉酒造さんは酒造好適米ではなく主食用米のみを使っていて、米の旨味を活かしながら面白いお酒を造っているみたい。
味にボリュームがあるので、マヨネーズの味もしっかりサポートしてくれる安心感。
炭酸で割るとなお大衆居酒屋感が出て素晴らしい。